ミクロ経済学について
今回から2週にわけて経済学の学習について記述します。
※少し立て込んでおり記事更新が遅れたことをお詫びいたします。
自己紹介の記事でも紹介したように、私自身のバックグラウンドとしては
・非社会科学系、非経済学部であること
・数学の基本的な知識は高校数学ⅡBだが、得意な方ではなかった
というものです。
それを踏まえて、あくまで公共政策大学院の院試に必要なだけの知識を得るのに十分なミクロ経済学の参考書について記述します。
本記事執筆にあたっては、同期及びOBOGからの意見をもとにしています。
また、参考書を終えるのに必要時間などについては記載していません。理解度やスケジュールについては個々人に依るものが大きいためです。自身の理解度スケジュールと合わせてご判断ください。
院試対策に必要な基本参考書について
超初級編:まず学部1年生レベルの知識からスタートしたいという方
持論として、新しい分野に入門する際には
- どのような学問を学ぶにしてもプライドや見栄を捨てる
- 学びたい学問の全体像をとらえるために、初学者用の薄いものを選ぶ
- わかりにくい箇所があれば、他書籍の説明も参照してみる
ことが重要だと考えています。
ヒヤリングでは、経済学部の方や理系の方にとってこれらの書籍は少し易しすぎると感じられたようですが、
後述する神取ミクロから入門し、全体の範囲を終えられないまま落ちてしまった人の話もあるので、下記の書籍である程度全体像を把握しておくことが大事かなと考えます。
本書は高校在学から読み進めることができます。
経済学がどういう問題意識から数学を分析ツールとして用い始めたのか、
そこで用いられているツールにはどのようなバリエーションがあるのかについて全体像をつかむことができます。
経済学やりたいけれど数学について少し不安が残る方におすすめです。
こちらはもう少し、ミクロ経済学がやっていることの内容をざっとつかみたい方向けです。
中級編でもご紹介させていただく奥野先生が執筆されておられるため、内容が大変わかりやすいこともさることながら、そのまま中級編のミクロ経済学に接続できる優れものです。
本書は公務員試験のために経済学を学ぼうとする方が最初に手を伸ばすべき書籍です。初心者にありがちな勘違いなどについて易しく導き、ミクロ経済学の全体像と初等的な計算方法についての練習を重ねることができます。
経済学との相性を見極めるうえで本書に取り組むのは最善なんじゃないかと考えています。
※私自身が使用していたのは前の版でしたが、検索してみると第2版が予約開始になっていました。前の版はいかにも初心者向きという感じで恥ずかしかったのですが、今は割と恥ずかしくない表紙ですね...
初級編:どうやらミクロ経済は計算が大事になってくるっぽいぞと感じられ始めた方
これらの書籍は、超初級編においてミクロ経済学の全体像をつかんだ後、各論における計算問題を解く感覚を得るのに最適と思われます。
公務員試験のための本が多く、公務員試験独特の問題なんかも含まれているようですが、「ミクロ経済学ではどういう操作をして何を求めたいのか」についての雑感を得られます。
公務員試験対策にもなるため、目を通しておいて損はないと思われます。
余談ですが、法学系の論述問題と異なり、経済学の試験では数値計算が主になってくるために、見直しや自己採点がしやすいという特徴があります。そのため、試験対策がしやすく、試験を受けるうえでは(数学にアレルギーがあっても)おすすめです。
実際に筆者もこのような不純(?)な動機から経済学で受験することを決定しました。
試験対応 らくらくミクロ・マクロ経済学入門(計算問題編) (らくらく経済学入門シリーズ)
- 作者: 茂木喜久雄
- 出版社/メーカー: 週刊住宅新聞社
- 発売日: 2006/04/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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中級編:ミクロ経済学の標準的な教科書で演習を重ねたい方
超初級編・初級編と重ねてきて、中級編をご紹介するのですが、この難易度について思うところを述べておきます。
ミクロ経済学の難易度ってなんなんだ?と疑問に思ったことがあります。学部と院でやる範囲は多少広くなることもあれど、
消費者理論、企業理論、市場均衡、ゲーム理論
など、あまり変わらないのです。
では何が難しくなるのかと申しますと、主観ですが、「数理的厳密さ」にあると感じています。
私が実際にミクロを学んでいたときには、超初級編や初級編での理解は、数理的厳密さに裏付けられていないように感じました。
なんとな~く効用関数というものが登場し、なんとな~く微分して0とおいてpを導出するような、理論というよりもプロセスを習得するような問題を超初級・初級編で解くことになります。
これはいい加減だということではなく、直感的な理解(つまりわかりやすさ)を優先しているが故の状況なのですが、実際に社会問題を分析するにあたっては厳密な数学的裏付は必要になってきますので、下記の書籍をしっかり咀嚼しながら進めていってみてください。
※私はこの段階で躓きました。高校以来まったく数式に触れていなかった私にとって、ラグランジュの未定乗数法などの術語や、数式操作による定理の導出はあまり親しみがなく、面食らった覚えがあります。私と同じように、数式になじみがない方々は覚悟をもって、ゆっくり一行一行を理解しながらすすめていくことをお勧めします。
神取ミクロについては私が言及するまでもなく、多くの研究者や大学生のブログでも紹介されておりますため、そちらを参照いただくのもいいかと思われるのですが、ここでは私が感じた本書の革新的なところについてご紹介します。
超初級・初級における計算はどのようなものがあったでしょうか?
効用関数と予算制約式からラグランジュの未定乗数法で...
企業の利潤最大化問題を組んで....独占・寡占の場合は...
余剰分析を行って...課税された場合の余剰は...
つまらないとは言いませんが、
(現実の社会問題を分析するのに経済学、とくにミクロが役に立つと聞いているけれど計算ばかりであまり現実味がないな...)
と感じられた方がほとんどだと思います。
そうした問題意識のもとに本書に取り組むと目からうろこの連続であると同時に、自分自身の知識の再確認にもなります。
ぜひ「力と技」の両方に取り組まれ、ミクロ経済学の面白さを感じていただきたいと思います。
ただし、本書は公務員試験のような込み入った経済学の問題を処理するには少し演習量が不足しています。
実践的な問題を分析する面白さはあるのですが、とはいえ試験問題に対しても取り組まなければいけないのがつらいところです。
そこで次の書籍・演習書を紹介します。
院試に関するヒヤリングでGrasPP生の人気が最も高かったのがこの奥野ミクロでした。
私自身もこの本の内容と過去問を直前期にこなし、7割程度の得点ができておりますし、友人たちも「公共の院試レベルなら奥野ミクロができていれば大丈夫」と感想を述べていました。
ですので、公共政策大学院を目指される方々は奥野ミクロの問題を目標として学習を重ねていくといいと思います。
また、1年ほど前に奥野ミクロの演習書の新版が出版されておりましたので、併せてリンクを記載します。書籍部で見かけたのですが、かなり大幅なボリュームアップがなされており、直前期に手を付けると爆死しそうだな...と感じました。
ある程度時間に余裕を持ち、奥野ミクロをしっかりと咀嚼しながら読み進める一方で、
社会問題への応用のされかたや奥野ミクロでは納得しきれなかったところについて、神取ミクロを参照するというような対策の仕方がいいのではないかなと考えます。
上記の中級教科書・参考書を解き終わり、時間に余裕がありなおかつ多様な問題に触れたい方はこの書籍をお勧めします。
恐らく大学図書館に所蔵されていると思われるので、一度中身を見てみて、手を付けるべきかどうか判断してみてください。
個人的には典型問題以外の問題に触れることで、
ほとんどプロセスを覚えて解いていた問題を別角度から考察し、理解を深めるいいきっかけになりましたし、
この演習書を解いた後に奥野ミクロや神取ミクロを眺めるとまた違った発見があるかもしれません。
ちなみに、本書の著者は東京にて院試対策の予備校を主催されているようです。
合格実績としても非常に素晴らしく、
院試に予備校使うのはどうかなぁ...と思っていたとしても、合格基準の情報など、ネットに記載されていない情報もあるかと思われますので、
もし不安な方がいらっしゃいましたら検討してみるのもいいかもしれません。
上級編:大学院で用いる教科書など
- 作者: Hal R. Varian
- 出版社/メーカー: W W Norton & Co Inc
- 発売日: 1992/02/01
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上記の二つの書籍は大学院で用いました。
当初はVarianのみで進めていたのですが、少々数学的にテクニカルな述語が出てきた際にその語義解釈に躓いてしまうことがしばしばありました。
行列表記や位相、ヤコビアンなど、大学数学をしっかりと積み重ねてきていない私にとっては慣れ親しみにくいものが数多くありましたので、日本語のサポートのために「現代ミクロ経済学 中級コース」を併用しました。
個人的な感想としては、大学院に合格した後にこれらの書籍をやっておくとコースワークがぐっと楽になると思います。
コアコースもなかなか苦労される方が多い印象ではありますが、
あくまで公共政策大学院のコアコースのため、経済研究科ほど厳密にやらなくても大丈夫と自分自身に言い聞かせながら努力を重ねてください。
Microeconomic Theory: Basic Principles and Extensions
- 作者: Walter Nicholson,Christopher Snyder
- 出版社/メーカー: South-Western Pub
- 発売日: 2016/09/13
- メディア: ハードカバー
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現在のコアコースは上記のもので進められているようです。
Varianよりもわかりやすいとのことでしたので、また中身をみてとっつきやすそうかどうかを判断するといいと思います。
出版年が新しく、内容も平易かつ大学院レベルはキチンとおさえている書籍のため、個人的には1年生のコアコースでこれを使いたかったな...と感じています。
- 作者: Geoffrey A. Jehle,Philip J. Reny
- 出版社/メーカー: Prentice Hall
- 発売日: 2011/04/20
- メディア: ペーパーバック
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最も難しかったコアコースの都市はMWGと上記のものを使用していたそうです。
あまりに難しく設定しすぎてコアコースを落とす人が続出してしまったため、翌年よりWalter Nicholson著のものに変更になったとのことです。
経済研究科も併せて検討されている方はまた目を通しておくといいかもしれません。
以上です。